2025/07/12

子どもの“今”を守るために―SNS禁止法が突きつける家庭の課題

コラム一発理解!PODCAST版


このコラムを音声で聞きたい方はコチラの動画をご覧ください。PODCAST版に要約して説明しています。

 

1. オーストラリアで成立したSNS利用禁止法案の概要

2024年11月29日、オーストラリア連邦議会は16歳未満の児童・生徒によるソーシャルメディア利用を原則的に禁止する法案を可決しました。本法案は可決後、最短で12カ月後に施行され、対象プラットフォームを運営する企業が違反した場合には最大5,000万豪ドル(約48億8,300万円)の罰金が科される見込みです BBC。法案成立時、アンソニー・アルバニージー首相は「私たちは子供たちに子供時代を過ごしてほしいし、親たちには、私たちが支えていることを知ってほしい」と述べ、児童の健全な成長を重視する姿勢を強調しました BBC

2. なぜ今、SNS規制が世界的に問題視されているのか

メンタルヘルスへの影響:SNS利用の過度な長時間化が、若年層の「中毒性」や「睡眠障害」、さらにはうつ病・不安症を誘発するとの報告が相次いでいます。米国では10~19歳におけるうつ病や自殺率がこの10年で急激に上昇しており、規制動向の背景にはこうした深刻な健康問題への懸念があります。

いじめ・誤情報の拡散:匿名性を悪用したネットいじめやフェイクニュースの拡散は、子どもたちの自尊心や社会的信頼を損なうリスクを高めています。SNSが情報受発信の場として普及すると同時に、問題点が顕在化しているのです。

デジタルネイティブ世代の通信環境:オンラインゲームやメッセージングアプリも含めて、子どもたちのコミュニケーション手段は多様化・常時接続化が進んでいます。SNSだけを規制対象とすることの是非が、あらためて問われています。

3. 規制対象と除外範囲

本法案では、スナップチャット、TikTok、フェイスブック、インスタグラム、X(旧ツイッター)など主要SNSが禁止対象とされる一方で、オンラインゲームやLINEのようなメッセージングプラットフォーム、アカウント不要で利用できるYouTubeなどは除外されています BBC。この線引きは、「視聴型」と「コミュニケーション型」を分けたかった政府の意図と考えられますが、いずれも“常時接続”“コミュニティ機能”を有する点では同じであり、禁止対象外のサービスによってリスクが移行する可能性も指摘されています。

4. 技術的・運用上の課題

年齢確認システムの信頼性:政府は生体認証や身分証明書の提示を含む年齢確認技術の実証試験に約650万豪ドルを投じる計画ですが、生体認証の誤認率やプライバシー侵害の懸念、さらにVPNを悪用した国外アクセスによる回避策が問題点として挙げられています BBC。

運用コストと監視の負担:プラットフォーム企業側に年齢確認技術導入と違反監視の責任が課されることから、運用コストの急増や中小事業者の撤退リスク、さらには監視態勢の強化によるユーザーのプライバシー低下といった副次的影響も懸念されています。

国際的な調整の必要性:SNSプラットフォームは国境を越えてサービスを展開しており、オーストラリア単独の規制では技術的回避を許しやすいことから、他国との規制連携や国際的ガイドライン整備が不可欠です。

5. 海外からの評価と批判

本法案には賛否両論があります。支持派は「子どもを有害情報や中毒性から守るために大胆な一手」と評価する一方、反対派は「選択肢を奪う過度な制限」と批判。本法案可決に際し、米グーグルやメタ(フェイスブック運営)は「効果に疑問があり、当初の目的を達成しないだろう」と声明を発表しました。若年層や人権団体からも「子どもの声を政策に反映すべき」という意見が出ています BBC。

6. 主要メディアが指摘する視点

  • 利用禁止に例外規定なし 法案は16歳未満のSNSアカウント保有・利用を一律禁止し、保護者同意を含む例外は一切認めない。違反したプラットフォーム運営企業のみに罰則(最大4,950万豪ドル)が科され、児童や保護者が処罰対象とならない点が明記されている。
  • 高い国民支持 世論調査では約77%のオーストラリア国民が本法案を支持し、子どもを有害情報から守る必要性に多くの保護者が共感していることが示された。
  • プラットフォーム企業の懸念 GoogleやMetaなど主要企業は、年齢確認技術の実効性やプライバシー保護上の課題を指摘。政府と共同で「透明性の高い運用ガイドライン」を策定する必要性を訴えている theguardian.com
  • 国際的な調整の要請 SNSサービスは国境を越えて提供されるため、オーストラリア単独の規制だけでは技術的回避を許しやすい。多国間協調による国際ガイドライン整備や、グローバルプラットフォームとの連携強化が求められている。

7. 「ゲーム除外」の意義と課題

本法案がオンラインゲームを規制対象外とした背景には、ゲームプラットフォームが「エンターテインメント重視」と見なされた事情があります。しかし昨今では、ゲームにもSNSに匹敵するコミュニケーション機能やガチャ課金などの依存リスクがあり、子どもたちの日常的な接続行動を考慮すると、対象外の判断が適切か疑問が残ります。

8. 家庭での取り組みについて

家庭内ルールの包括的見直し:SNSだけでなく、オンラインゲームや動画視聴も含めた「総合的なスクリーンタイム管理」を話し合い、デバイス設置場所や利用時間帯を明確化しましょう。

対話による信頼関係構築:規制か罰則かの一方的な押し付けよりも、「何を楽しみ、何に困っているのか」を日常的に聞くことが重要です。子ども自身が自律的に安心・安全な使い方を選択できるようサポートしましょう。

メディアリテラシー教育の推進:フェイクニュースの見抜き方や個人情報管理、ネットいじめへの対処法などを具体的事例とともに教え、子どもの判断力を育てることが欠かせません。自治体や学校で実施される講座にも積極的に参加するとよいでしょう。

技術的ツールの活用:スクリーンタイム設定やフィルタリングアプリ、利用履歴の共有機能など、家庭で合意のうえ導入できるツールを活用し、子どもの利用状況を見守りつつ、自律的改善を促します。

9. 今後の展望と日本への示唆

オーストラリアの規制は極端とも言えますが、子どもたちが安心して「子ども時代」を過ごせる環境づくりへの強いメッセージを発しています。日本でも個別法よりも、家庭・学校・地域が一体となった包括的アプローチと、国際的な議論への参加が求められます。SNSやオンラインゲームの利便性とリスクをバランスよく捉え、子どもの成長を支える社会インフラを整えていきましょう。